MEMO

創作語りとかラクガキ

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No.86, No.85, No.77, No.73, No.72, No.70, No.687件]

マギの民
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【マギ】
ドラグーン・ハーディンの宗派が生まれる以前
遥か昔から存在した 『古代の魔法使い』たちの総称。


吟遊詩人としての一面もあり、
稀に街に下りてきて披露される歌声は
『神の歌い手』と称されるほどである。

伝統衣装に身を包み、
眼を常に覆い隠した奇妙な格好をしている。

奥深い森や人里離れた場所にひっそりと暮らし、
伝承を守り続けている神秘の一族…

では、あるが。

そのイメージとは裏腹に、かなりフランクな人々で
巡業先ではたちまち人気者になる。

イメージ商売、という理由で
巡業ではマギの伝統楽器『リュタ』を使う事が多いが

当人たちは別に楽器のこだわりは一切無く
ピアノ、トランペット、シンバル、ハーモニカ、カスタネットと
なんでも使えるし、むしろ使いたがる。

マギがドラグーン・ハーディンの争いに干渉しない一方で、
ドラグーンとハーディンたちも互いに
『マギの前では諍いを起こさない』という
暗黙の了解がある。

それはマギを争いに巻き込まない為…ではなく
両者が緊迫した空気になればなるほど
マギたちがそれに合わせるかのように
BGMを勝手に編曲・演奏し始めるからである。

それがまた絶妙なタイミングで効果音入れてきたり
あるいは間の抜けた音楽に仕上げてくるので
両者脱力して喧嘩終了となる。

争いを好まず、のほほんとしたノリの良い人々であるが
一族のことに関しては一切語ろうとはしない。

また、ドラグーンとは違った『魔法』を使えるが、
それがどんな『魔法』なのかも謎に包まれている。



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別に喧嘩の仲裁したいとかではなくて、
本当に単純にBGM入れたいだけのマギの皆さん。

目を離した数秒の内に
楽器を持ち替えるから油断も隙も無い。

知らん間にどこからか楽器を取り出す
四次元ポケットの使い手。

東西南北文化国境関係なしに
楽器ならなんでも手を出す。そして極める。
多分バグパイプとかアコーディオンも習練済み。

左の彼が持っているのは「ヴィブラスラップ」
『カーッ!!』っていう時代劇みたいな音がするアレ。


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マギの人々は、常に目を覆い隠しているので
「前が見えていない」「元々目が見えない」
という誤解を受けがちだが
別に目が不自由というわけではない。

彼らがしている眼帯は、外側は透けないが
内側は透過して見える仕様。
なので目隠し状態で暮らしているわけではない。

マギは顔半分隠れている状態が常なので
眼帯の意匠によって個人を判別している。

同じデザインは二つとなく、
それぞれの家庭によって特徴がある。
家長や年長者になるほど、その意匠は凝ったものになる。

眼帯のデザインを変える事は自由だが、
『顔』の替わりでもあるので
あまり変えすぎると、同族ですら会う度にいちいち
「どちら様ですか?」と訊かれてしまうのが面倒なので、
変える者は殆どいない



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VLAD

微睡みのうた
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朦朧とした意識の下で
最初に聴こえたのは歌だった。



何を歌っているのかはわからない。
ただ とてもきれいな声だったので、
ああ自分はとうとう死んでしまって
あの世に来たのだな
と、本気で思った。

自分が住んでいた世界に、
こんなきれいな声はどこにもなかったから。

だからきっと、この世ではない場所に来たのだろうと。

しかし、

次の瞬間に感じた鈍い痛みと
鉛のように重い身体の感覚が、とても現実味があって。

自分が生きていることに気付くと同時に
引きずり込まれるような絶望に襲われた。

まだ、自分は地獄の続きにいる。

死ねなかったのだ。

助けたのは、この傍らで歌っている人間だろうか。

どうして死なせてくれなかった
放っておいてくれたらよかったのに

そう言いたかったが、口から吐き出されたのは
砂の混じった、渇いた呼吸だけだった。

「ん?目が覚めた?」

歌が止むと同時に発せられた声は、
想像していたよりもずっと幼く、やさしい声だった。


『・・・・』


自分は答えなかった。

口が渇いて声が出ないこともあるが、
こういう時、どう答えていいのかが
わからなかったからだ。

「? ・・・~~~♪」

うわ言だと思ったのか、
声の主は再び歌いはじめた。

・・・・

かつて、自分の傍らで
こんな風に歌ってくれる人間がいただろうか。

あんなやさしい声で、
話しかけてくれた人間がいただろうか。

ただただ戸惑って
何故か泣けてきて

再び意識が沈むまで、そのやさしい歌を聴いていた。




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ヴラドとアダムの出会い編。

アダムは奴隷として飼われていた町から逃れて、砂漠で行き倒れ。
ヴラドはそのアダムを発見して介抱。

一人遊びの一環として、よく歌うヴラド。

アダムはこんな風に歌を聴かせてくれる人間が今までいなかったので、
ひたすら戸惑う。

そして大人になった頃、その時の感動を延々と語るアダム。
普段無口なくせに、こういう時は活き活きと喋るので
ヴラド忠愛っぷりがちょっと気持ち悪い。

ヴラドはこの手の話になると居心地悪くなって
最後にはキレる。

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VLAD,ヴラド

ディオとガブリール
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「ぷい~ん ぴゅ~~~」(=゚3゚)
『・・・・・・・。(寝る気無ぇなコイツ)』


その内描きたい創作親子。

創作

東の参雄
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あんな化け物相手では、命がいくつあっても足りない。

50年近く経った今でも、背筋が凍りつくような記憶だ。

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わしがまだ駆け出しの兵士だった頃、 東国の悪魔たちと戦争した。

極東の国・ヒムカは当時、鎖国状態で
【鬼人(キビト)】と呼ばれる民族が暮していること。
その民族はその名の通り、【鬼】の力を持った者たちであること。

などと聞いていたが、同時にとても原始的な暮らし、
電気すらないような文明だとも聞いておった。


そんな連中相手なら、圧勝できると。
一方的な戦いになると、誰もが思っておった。


結果的に、


戦いは一方的なもので幕を閉じた。
わしらの完全敗北、という形でな。

小国へ侵攻するには大袈裟すぎる、
とまで揶揄された大空挺団が
たった三人の鬼人によって、一夜で壊滅状態となった。

その時わしには、何が起こったのかわからんかった。

さっきまで目の前で談笑していた友の姿はどこにもなく、
ただ突如襲い掛かった
轟音と爆発
衝撃と熱に翻弄され

気付けば全身の痛みと共に、瓦礫に横たわっていた。

その時見たのだ。
炎の中に佇む、三つの影を。

そのうちの一つは、まるで子供のような体躯だったが
三つの中で、最も恐ろしい気配を放っていた。

そして何気なく、
こちらを振り向いたかと思えば

奴は

数ある死体の山から一点、わしの眼だけを見ていた。

蛇に睨まれた蛙とは、正にあのことよ。
わしは死を覚悟した。

しかし奴は、
傍にいる仲間からすら隠れるように
口の動きだけで、わしに語りかけてきた。

わしには読唇術の心得はなかったが、
不思議なことに、奴が語る言葉は
流れるように理解できた。


 静かに お若い方

 そのまま 死体のように眠っていなさい

 ご安心を

 貴方は生かして帰してあげます

 そのかわり 伝えてもらえますか

 貴方のお国の方々に


 この惨状と 貴方が体験した恐怖


 我々と 【戦う】 という事が


 一体どういうことなのかを



全身の震えと、冷汗が止まらなかった。
まるで耳元で囁かれるかのように、
奴の言葉は静かで、重みと、殺気が込められていた。


 ここで遭ったことを しっかり刻んで

 お家へ帰るのですよ


 もうこの地へは


 来てはいけない




あんな化け物相手では、命がいくつあっても足りない。
50年近く経った今でも、背筋が凍りつくような記憶だ。






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KIBITO

対岸のふたり
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そして、二人以外に
動くものの気配は無くなった。

銃声の余韻も消え去り
沈黙が落ちる瞬間、

二人は同時に振り返った。




「・・・・・・」

「・・・・・・」


互いに得物を向け合ったまま、数秒睨み合ったのち
最初に口を開いたのは、ヴラドの方だった。


「おたくも頑張るねぇ。
 そんな簡易法具で魔境の深部までおつかいとは。
 妖素中毒になる前に引き返した方がいいぞ?」

「生身姿の貴様に言われたくはない。
 そもそも何故ここいる?
 行く先々で現れて、鬱陶しい事この上ない。」

「ご挨拶だな、助太刀してやったのに。」

「頼んでいない。必要もなかった。」

「ま、たしかに。」

強がりではない。
それは周りに転がっている死体の数を見れば明らかだった。

ヴラドが参戦した時には、既にこの半数を
彼女は一人で倒し終えていたのだ。

「相変わらず勇ましい事で」

賞賛とも皮肉とも取れるようなヴラドの言葉を聞き流しつつ、
カミーユは剣を収めた。
時間の無駄と感じたらしい。

「とにかく、もう邪魔立てするな。
 私は忙しい。」

わざとらしいくらいの溜息を吐きつつ、
カミーユは歩き出した。

そのあとを、当然ようにヴラドが続く。

その気配に気付いたカミーユの表情がピキッ、と強張り、
睨みつけるように振り返った。

「付 き ま と う な
 …斬るぞ。」

最後の一言はかなりの怒気と殺気を込めて言い放ったが、
ヴラドの表情は飄々としたものだった。

「…以前にも言ったがな。十王探しはやめておけ。」

またか。
カミーユは舌打ちしたくなった。
聞き飽きたセリフである。

毎度、十王の手がかりを追って来てはヴラドたちが現れ、
この忠告をカミーユに投げかけてくるのだ。


十王を所有したいのは、ドラグーンの魔法使いたちも同じだ。
ゆえに現場で遭遇すれば、牽制・妨害は当然のこと、
命の奪い合いになることも少なくはない。

なのに、この魔法使いは
相手の命を奪うどころか助太刀に入り、
露骨に妨害してくるわけでもなく
毎回同じ忠告だけをしてくる。

(わけがわからん…)

カミーユは思った。


聞き流し、無視すればよいことなのだが
この魔法使いが【忠告】を言い放つとき、
必ずある種の感情が込められている事を
カミーユは敏感に感じ取っていた。

憐憫。

カミーユにはそれが癪だった。

こちらとしては国と、その民が生きる大地を守る為
命をかけて十王を探しているというのに。

こちらの意欲を削いでくる上
全てをわかったような、
憐みの目で忠告を寄越すこの魔法使いが、

カミーユは大嫌いだ。







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VLAD

主と下僕と友と友
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気が付けば 少年は泣いていた

斬り捨てている敵への情けなど、微塵も無い

だが斬っても斬っても現れる その敵兵の多さに

友の死を望む者の多さに

怒り

悲しみ

そして、

この中へ独り、身を投じていった
友の絶望を思った

その思いに気付かなかった
己の無能さを嘆いた

少年は泣きながら剣を振るう

血を浴びながら友を想う

ただ突き進み
斬り拓き
まっすぐと
友が待つ場所へ

その魂に狂気を纏いながら 

少年は疾った。



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VLAD