小話 2026/03/08 Sun #くれない それは只の力である 海原にて口を開ける大渦であり 天を穿つ雷鳴であり 根の底を這う灼熱の河である これを冠するは唯一であり これを律するは己の中の鏡のみ これは朝日でもなく 常闇にもなれない者 黎明と終末に現れる影 不吉と光明を携える境界である これを手招く者 心せよ その神は 汝の心のままに謳う 『謳う竜』 続きを読む爆心地のような衝撃が過ぎ去った後、 かつてマギが吟じた詩の一説が、目の前を漂っていた。 全身の震えと、冷や汗が止まらない。 突如現れた『これ』が何なのか 、 私とモーガンは一瞬にして理解した。 辺り一帯は、ひと息でも吸えば 窒息しそうな空気と 濁流に囲まれているかのような 、圧力の海だ。 その中心に立っている小さな影は何も語らず、 凪のように静かに、前を見据えていた。 自らの背後にいる強大な存在に目もくれず、 ただ正面にいる『あの者』しか見ていない。 これが、こんなことが 貴方の最初の『願い』なのですか。 その言葉が声となって出ることはない。 言う資格もない。 陛下の口元がわずかに動く。 その声はこちらには届かない。 それを合図に、そびえ立つ影が同時に動き 決着は一瞬だった。 畳む
それは只の力である
海原にて口を開ける大渦であり
天を穿つ雷鳴であり
根の底を這う灼熱の河である
これを冠するは唯一であり
これを律するは己の中の鏡のみ
これは朝日でもなく 常闇にもなれない者
黎明と終末に現れる影
不吉と光明を携える境界である
これを手招く者 心せよ
その神は
汝の心のままに謳う
『謳う竜』
爆心地のような衝撃が過ぎ去った後、
かつてマギが吟じた詩の一説が、目の前を漂っていた。
全身の震えと、冷や汗が止まらない。
突如現れた『これ』が何なのか 、
私とモーガンは一瞬にして理解した。
辺り一帯は、ひと息でも吸えば
窒息しそうな空気と
濁流に囲まれているかのような 、圧力の海だ。
その中心に立っている小さな影は何も語らず、
凪のように静かに、前を見据えていた。
自らの背後にいる強大な存在に目もくれず、
ただ正面にいる『あの者』しか見ていない。
これが、こんなことが
貴方の最初の『願い』なのですか。
その言葉が声となって出ることはない。
言う資格もない。
陛下の口元がわずかに動く。
その声はこちらには届かない。
それを合図に、そびえ立つ影が同時に動き
決着は一瞬だった。
畳む