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創作語りとかラクガキ

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No.91

経験不足

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『⋯う~ん、ちょっと状況がわからないなぁ。
 だれか説明してくれる?』


「ダレス卿。どういうつもりだ?」

「それはこちらの台詞ですな、殿下。
 魔法使いをこの国に入れるなど…
 何を考えておいでです?」

「知れた事。
 妹にかかった【呪い】は、もはや聖霊術では
 どうにもならん。
 手段を選んでいる場合では無い事は
 わかりきっているだろう。」

「そこでその魔法使いの力を借りよう、
 というワケですか?」

「そうだ。」

「承服できませんな。
 治療のフリをして、姫様にどんな【呪い】をかけるか、わかったものではありません。」

「では、このまま何も手を打たず
 アリィが死ぬのを待てと抜かすのか
 貴様らは?
 大した忠義心だな。」

「今、我が国の術師たちが
 総力を挙げて治療法を探っております。
 どうかご安心ください。」

「それでは手遅れになると何度言わせる気だ!」

「仮にそうなったとしても…
〝ナスカディルの王族は
 魔法使いに命を救ってもらった〝
 …などという話が広まり、
 この国の沽券に関わるような事態に
 陥るよりは…致し方ありません。」

「はっ、それが【国王陛下】のご意見か。
 相変わらず体裁ばかり拘るじじいだ。
 娘の命すら、その天秤にかけるとはな!」

「殿下。
 そうなった場合、一番お辛いのは姫様です。
 名誉を汚した王族に対して、
 陛下がいかにお厳しいか…
 殿下はよくご存じのはず。」

「…ダレス。
 これが最後の警告だ。

 私が剣を抜く前に、失せろ。

 今の私には、
 これ以上お前たちの戯言に付き合ってやる時間も、
 余裕も、無い。

 私がアリィの為なら、【何でもする】ことは
 お前もよく〝ご存じ〝だろう?」


「・・・・・。」



『はぁ〜、どこのご家庭も大変だ。』

「…小僧。
 死にたくなければ余計な口を挟むな。」

『ははっ、どうせ殺す気なくせに。
 最後の一服ぐらいさせてよ。

 ところでこんな話を知ってるかな?

 ドラグーンもハーディンも、頭数は大して差が無いんだけど
 【カラビニエ】みたいな戦闘特化部隊っていうのは本当に少数で
 ドラグーンの殆どは、研究職みたいな
 非戦闘タイプなんだよねぇ。』

「は?」

『クラウンを扱える技量はあっても、
 戦闘機動までできるかと言われたら
 そういうわけでもなくてさ。
 やはり戦闘員の多さは、ハーディンには全然及ばないみたいだよ?』

「一体何の…」
『でもね』

『そのハーディンも、実戦経験の殆どが
 【魔獣】相手なんだ。

 戦闘特化タイプのドラグーンは少ないから
 遭遇率も低いんだろうねぇ。

 ドラグーンとの対戦経験のあるハーディンは
 大僧正お抱えの『暁星騎士団』、
 あとは先の戦争経験者ぐらい。

 その経験者も、今や引退か高齢化しちゃってて
 若手の経験不足がずいぶん深刻らしい。

 だから結構やられちゃうんだってさ。
 知らぬ間に
 ドラグーンの、
 術中にハマってね。

 ちなみに、我らドラグーン戦での鉄則は
 「喋らせる隙を与えるな」、だ。』

「・・・・・・」

『さて、ここで質問なんだけど。

 僕の見立てでは、諸君らは全員
 【経験不足】側の騎士だと思ってるわけだが…
 どうかな?
 
 ま…訊くまでもないか。』


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『さて、無駄に時間をくったね。
 先を急ごうか。』

「…お前、一体何をしたんだ?」

『ん?ああ、アレ?
 みんなで仲良く三日ほど
 森の中をお散歩してもらうだけだよ。

 前後の記憶はごっそり消えるから大丈夫。
 さっきのやりとりも
 ここで僕たちと会った事も
 綺麗さっぱり、忘れるさ。』

「いつの間に呪文を?」

『ドラグーンは言の葉を操る魔法使いだよ?
 会話や呼吸の合間に、
 【竜言語】のせるぐらいワケないさ。
 まぁこの方法だと唱え終えるのに
 かなり長話しないとダメだけど。
 いや~呑気に聞き入ってくれたから
 助かったよ、ホント。』

「…なるほど。
 さっきの話が事実だということが
 皮肉にも証明されたわけだ。」

『(非戦闘タイプもこの手の術は出来る事は言ってないけど)
 ⋯ま、そういうこと。君も気を付けてね。

 お喋りなドラグーンに遭遇した時
 相手の話に付き合ったら、駄目だよ。

 こんな風に、知らない間に催眠かけるなんて
 お手の物なんだからさ。』

「・・・・・・・・。」

『おー怖、そんな睨まないでよ。
 君にはしないから。
 【約束】だからね。』


『しかし思いの外うまく行ったなぁ⋯。
 経験あるハーディンなら、【竜言語】の
 特殊な発音に気付いて、術の完成前に
 相手を攻撃したりするんだけど⋯

 マスターの言ってた通りだ。
 経験不足って、怖いねぇ。』





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