MEMO

創作語りとかラクガキ

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No.96

通り雨
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渇きを癒して すぐ止んだ
私の愛しい通り雨



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幼い頃、雨の日が大好きだった。

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みなが家に籠もり、
町から人の気が無くなる薄暗い日。

誰もいない小道を
母といっしょに散歩できる唯一の日だった。

あの頃、僕にとって外の世界は
雨の世界が全てだった。

いつもは潜めている声も
雨の音が全て消してくれる。

僕をジロジロ見てくる人々も
雨が家の中へと封じ込めてくれる。

誰も見てくる人がいないから、
いつもは隠している眼で
空を見上げることもできた。

雨が
僕にわずかな自由を与えてくれた。

そのせいだろうか。

いつからか、僕がふと願うと
雨が降るようになった。

庭先の花が枯れそうになった時も。

隣の山で火事が起こった時も。

母と離れ離れになったあの日も。


僕を不安から守るかのように、雨が降った。


兄のもとで暮らすようになって
すっかり背丈も伸びきった頃

雨は、ほとんど降らなくなっていた。


もうお守りはいらないのだと
弱い子供ではなくなったのだと

そう思っていたのに




最近また



雨が、よく降る。

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おまえは雨みたいな男だな


そう言うと
むかしから雨男なんだよ
と返ってきた

そういう意味で言ったつもりではなかったが
うまく説明する言葉が見つからなかったので
そのまま言い流すことにした

確かに、よく雨が降る
私が出かけようと思った時には、特に。

その度に奴は、
遣らずの雨だねぇ
と、うれしそうにぬかすので

こちらもすっかり
毒気を抜かれるのだ


本当に


雨みたいな男だった


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きっと一生、忘れることはない
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漆黒の葬列に
似つかわしくない程の
紺碧の空

雲ひとつない快晴の日

わずかに震えていた父の手と

まるで幻のように降った


あの雨を

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畳む

VLAD,ドレイク