MEMO

創作語りとかラクガキ

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※25.10.25 色塗加筆


ビフォアー
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バルムンクとクラウディアの話が脳内で渋滞起こしているので、何か描いていこうかと企み中。


ブラムドの母親ビジョンを一応作っとこうぐらいのノリで描いていたクラウディア女史、
大人しいお嬢さんかと思ったら物凄く勝手に動いてくれるので
割とさっぱりとした馴れ初めにする予定が
胃もたれするぐらい重くなりそうです。

武人一家の娘なので肝座ってる実直な気質。
樹木や森に神性を見出す【ドルイド】と呼ばれる神官のひとり。
とあるお役目から森を出て俗世間で生計を立てているが、還俗したわけではない。


神官らしく所作も口調もお淑やかだけど、たまに男前。本人も知らない間に周りから「お姉様」と呼ばれている。
根っからのお人好しなので余計なことに首を突っ込みがち。ブラムドの性格はこの母親に由来する所が多い。

幼少期にバルムンクに関わる事件に巻き込まれているが、生家の名誉に関わる事案なので本人にはあえて知らされていない。
結婚した後、バルムンクはこの件に関して時々追及を受けるがしらばっくれている。


バルムンクが当時を知る者以外で唯一、
イバとの思い出を語った相手。


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バルムンク

#掌の記憶
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懐かしい夢を見た。

幼い俺。

イバの白い手と、

綴られた文字。


-------------------------



『式番』を賜ったハーデインの騎士は、
己自身の名前を語らなくなる。

それは『式番』を持つことが、騎士にとって
至上の名誉ということもあるが、

『名前』を知られる事で、
『呪い』をかけられるのを避ける為でもあるそうだ。

誰から?

それは勿論、
俺たち『魔法使い』からに決まっている。

魔法使いが『真の名』を隠すため、
『語り名』を使うのと同じように。

騎士は名を『式番』に改めることによって
『名』を隠す。

長く同じ部隊に属する騎士同士ですら、
仲間の名を知らないことは珍しくないそうだ。

なので特に禁止されているワケでは無いが、
ハーディンの騎士に名前を訊ねるのは
『暗黙のタブー』となっている。

…が、俺がその事を知ったのは
だいぶの後の事で。

イバの名前を訊ねた事に深い意味は無かったし
教えてくれなければ
それはそれで別によかった。

イバの明らかに躊躇った様子も
「よっぽど変な名前なのか?」 と
能天気に考えたものだ。

だから、わからなかった。

イバが

あいつが

どんな気持ちで
俺に『名前』を教えてくれたのかを。


今でも鮮明に思い出す。


ペンすらまともに握れないイバが
俺の掌に
指で『名前』を綴った、あの日のことを。

正直、拍子抜けするほど普通の名前だったので
ついつい「隠すほどの名前か?」
と口が滑ってしまい
思いっきりゲンコツを食らったが。

・・・・・・。

イバの『名前』は、今でも俺だけが知っている。

俺は死ぬまで、その『名』を忘れることはないだろう。
だが、俺が死んだ後は?
俺自身は忘れられることに
特に抵抗はない。

死ねば所詮『無』になるし、
そもそも俺の場合は、立場上嫌でも
『存在』は後世に残るだろうから。

だが、イバは。

本当に、消えるように死んでいったあいつは

俺が死ねば、もう
誰も思い出すことはないだろう。

あいつの存在は、此処の連中にとっては『汚点』だ。

かつて此処にいた事も、
俺といた事も、
そして、死んでいったことも。

一切、無かった事にされる。

そう考えると、無性に腹が立った。

何故だろう。
以前からわかりきっていた事だろうに。

らしくないとは思いつつ、
苛立ちは収まってくれない。

きっとこれも
あいつの夢なんか見たせいだろう。

『満月』のせいで、
らしくもなく感傷的になっているからだ。

八つ当たりにも近い気持ちで
窓から見える月を睨みつけながら、
深く、長い溜息をついた。

その時、

「…ん」
『ん?』

隣で眠っている妻が身じろぎをしたので
起こしたかと思ったが、
その眼は開かれる事はなく、静かに寝息を立て続けている。

その腹はずいぶん大きく、見るからに寝苦しそうだ。

妻は毎日、その大きな腹を
愛おしそうに撫でたり、話しかけたりしているが
正直、俺には何の感慨も湧かない。

せいぜい世継ぎ跡継ぎとやかましいジジイ共が
やっと静かになると安堵するぐらいか。

クラウディアが望まなければ、
子供なんぞ作る気もなかったのだが。

人生とはわからないものだ。

イバが消えたあの日から、
もう誰かの側で眠ることは
二度と無いだろうと思っていたのに。

いや、そもそもイバがいなければ
俺はもっと早くに死んでいただろう。
それこそ彼女と出会う前に。

・・・・・・・

今でも、あいつが俺を護る。

だが俺が
あいつにしてやれることは、何もない。

何も、無いのだ。

「うーん・・・」

呻き声に思考を切られ、
隣を見遣ると、クラウディアが眉根を歪めていた。

見ると、彼女の腹部がぐねぐねと動いている。
腹の中の赤子が眼を覚まして
動き回っているのだろう。

それもかなり活発に。

何度かその様子を見た事はあるが、
何度見ても気持ちが悪い。

『…おい、母君を起こすな。寝ろ。』

うねる腹に手を添えながら小声で言うと、
中の生き物はピタッと動きを止めた。

意外と話が通じる生き物のようだが、
キモイ事には変わりない。

胎児の性差などよくわからんが
この暴れっぷりはおそらく男だろう。

男か…
自分に似ていない事を切に祈るのだが…
今から既にうんざりしている。

・・・・・・

ふと、

悪戯心が湧き上がった。

あと数カ月で生まれてくる『こいつ』は
間違いなく、俺が名付けをする事になるだろう。

『語り名』はもちろん、

『真の名』も。

イバの『名前』は、俺以外は誰も知らない。
由来なんぞ、わかるはずもない。

そう考えながら、俺はいつもの調子が
戻ってきたことを感じていた。

苛立ちはもう微塵も残ってはいない。

『くっくっくっくっ…』

妻が見たなら絶対に警戒して
後退りするような笑みを浮かべながら

俺は夜明けまで
もうひと眠りすることにした。

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くれない,バルムンク

先帝と十王

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よしよし いい子だ
いい子だな お前は




【SIDE B】

十王から放たれた光が霧散すると、
そこにはもう何も残ってはいなかった。


骨も影すら残さずに。


哀れ、勇敢な騎士は塵となって消えた。


振動した空気の余韻が収まると、

ウルスラグナは、俺を中心にしてぐるぐると落ち着きなく、
蜷局を巻くように回りはじめた。

どうやら他にも襲ってくる者がいないか、
警戒しているらしい。


「・・・ちょっと遊び過ぎたか?」


思いの外、心配をかけてしまった『彼』に対して
悪びれも無く告げると

『彼』は俺の危うい行動を咎めるように、
ふんっ、と荒い呼気を吐き出した。


と、同時に


空からボトボトと、
先ほどまで騎士だった『何か』が、次々に落下してくる。


残っていた『化身』の姿も気配も、とっくに消えていた。


そりゃそうだ。

慌てた『彼』が、俺に向かって身を翻すと同時に、
その巨体で騎士たちを一瞬でミンチにしてしまったのだから。

『彼』にかかれば、『白衣』の騎士すら蟻んこ扱い。

全く、つくづく恐ろしい存在だ。



『陛下!ご無事ですか!』



鱗の壁の向こう側から、カリフの声が響いた。


『彼』は、カリフが味方であることは知っている。

カリフの姿を認めると、スゥッ…と、空に舞い戻った。

やはり、地面よりは空の上がお好みらしい。



「見ての通りだ。
 つか、来るの速くねお前?
 半径1キロ圏外に居ろと言った気がするが?」

今回の『実験』では
純粋な『十王』の力を試したかったので
カリフを含め護衛には全員
前線よりご退場頂いていたのだ。
まぁ、かなり反発されたが。


『全力で疾走すればこの程度の距離
 造作もございません。』


「ああ、そう……。」 


ヤダこの子こわい。


『そんな事よりも、先ほどのような
 敵を挑発する行為は、今後絶対にお止めください。

 なぜ、あんな際どい距離まで敵を引き寄せたのですか?

 騎士の存在には最初からお気付きだったはず。
 もっと早く、迎撃することは可能だったでしょう?』


珍しく怒りを隠しきれない様子で
カリフが詰め寄ってきた。

ほう?傍から見ると
そんなに危なかったのか?


「なに、こいつの機動性を試したくてなぁ。
 いよいよヤバイぎりぎりのところまで
 『待て』をかけてみたんだが…

 まぁ、それでもまだスピードに余裕あったな。
 まぁまぁ良いデータが取れた。」

さかさかとメモを書き留める。

まるで反省する様子のない俺に
心底疲れ果てたような目線を投げながら
カリフが肩を落としている。


『…無茶も好奇心も、ほどほどにして頂かなくては。
 このような混乱した戦場では、我々も
 御身をお護りするには限界がございます』


「と言われてもなぁ…
 奴らの『化身』をまともに相手できる者は
 限られているしな?

 結果オーライだ。
 ま、結局まともな相手にすらならなかったが。」

 『化身』

ハーディンが纏う人工聖霊の最終進化形態ともいえる
巨大な人工魔導体。

1体でも戦局をひっくり返すといわれる奴らの『切り札』が
この度4体も投入されるというから
こちらも胸を躍らせてやって来たというのに、だ。

結果は苦戦どころか片手間でミンチ。
期待外れにもほどがある。
 
「雑魚過ぎてまともなデータ取れやしねぇ…。」

全く持って実に残念すぎる。
まさかここまで能力差があるとは思わなかった。

通常『化身』4体相手では
『カラビニエ』全隊投入しても、損害は免れなかっただろう。

ところが『彼』一体でこの戦果。
まさに『ジョーカー』だ。


『…まさか本当に、十王の戦闘能力を測る為だけに
 今回の戦いを仕掛けたのですか…?』

「うん。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


『そんな事で、
 帝国の、
 神聖なる、
 英知の象徴である、
 十王を、
 戦 場 に 投 入 し な い で く だ さ い 。

  …他国への心証が悪すぎます。』

最後は力なく言い放つ。

呆れて怒る気も起きない。
そんな様子だった。


「別にいいだろ?

 『化身』相手じゃ、どうせこっちも
 『咎人』あたりを使うつもりだったんだろうが。
 どっちでも心証変わりはしねーよ。

 それに俺も別に殺戮破壊が好きなわけじゃない。

 ただ必要な実験要素として
 結果的に人命を消費してるだけ。」


『・・・・・・・・・。』
返す言葉もない。
そんな様子だった。


「あー…つまらん。

 やはり『人工聖霊』相手じゃ話にならんな。
 こんなにも性能差があるとはなぁ。

 やはり『十王』の相手になるのは、同じ『十王』しかいないのか…?」


たいして書きこまれていない戦闘データのメモを眺めながら
ブツブツと文句を並べる俺に
フリーズから解けたカリフが問いかけてきた。


『陛下は何故、それほどにも
 十王の能力を測ることに 拘られるのですか?』

おいおい、今更それを訊くのか…。

まさかこいつ、今まで本気で
俺が娯楽目的で十王を戦争に使ってた、
と思ってたんじゃないだろうな。


「…得体の知れないものを、持たされるのが嫌なだけだ。

 ある日突然、ことわりも無く
 扱い方も性能もよくわからん
 特級の『爆弾』を背負わされてみろ。

 気持ち悪いったらありゃしねぇ。
 そうだろ?」

そう。

『十王』はまさに
『得体の知れない存在』だった。

過去数百年の記録を洗っても
帝国の守護者たる
十王『ウルスラグナ』の記録は、

結界の要である『竜歌』と
形状などの『見た目』以外のことは
ろくに残っていない。

特に『継承者』の記録など、
百年以上前のものは皆無に等しい。

『継承者』は代々出現しているにも関わらずだ。

帝国混乱時代に記録が焼失した可能性もあるが
それにしても資料が少なすぎた。

帝国の生命線ともいえる『十王』に関して
ずさんな管理をしていたとは考えにくい。

意図して残さなかったのか。

あるいは誰かが記録を消し去ったのか。

いずれにしても理由はわからない。


だが、よくわからないままでも
『継承者』は十王を受け継がなければならない。

『継承』を逃れる術が、無いゆえにだ。

わけのわからないまま、押し付けられる『十王』

強制参加の『継承システム』

【加護】というより、まるで【呪い】のように
俺たちの一族に受け継がれるのは何故なのか。


「ご先祖共は後継者争いにお熱で、
 そっちの方にはてんで頭が回らなかったみたいだが…。」

『知らなかった』で馬鹿を見るのは、御免だ。



空を仰ぐ。

『王』に相応しい、雄大な姿で『彼』は空を泳いでいた。

その姿に、疲れは微塵も窺えない。

先ほどまで、『化身』4体相手に戦っていたとは
思えないほどだ。

これだけの圧倒的な力を持ちながら
下僕というよりは、無垢な子供のように
『継承者』に従う、十王『ウルスラグナ』


その力の見返りに、最終的に『何を求められる』のか…


今までの『継承者』は考えた事がなかったのか?


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


黙り込んだ俺に、
カリフはいつもの思案癖が始まったと判断したのだろう。
親衛隊へ無線連絡をしている。

そろそろ撤収しなければならない。
納得のいくデータが取れたとは言い難いが、
相手がいないのであればしょうがない。

すでに敵は、空を独り占めしている『彼』の姿を見て
完全な敗北を悟っているはずだ。

これ以上、戦いを仕掛けてくることも無いだろうが
撤収の時間まで、『彼』を自由に泳がせておくことにした。



あの青鱗が広大な蒼穹に混ざる姿は 
子供の頃から幾度も見た。

しかし、何度見ても 美しい。

『十王』そのものに対して、嫌悪や不満があるわけでは無い。

このまま、歴代がそうしてきたように
『継承システム』に身を任せる事は簡単だ。

しかしそれは

このシステムの『裏』に隠れている 『何か』の存在に、

『何か』の意図に

思うように、操られているような

そんな気がして


つまり


非常に、面白くない。




確かめてやる。

『十王』とは、

この『継承システム』の意味は、

一体、何なのかを。


俺なら必ず解る。その確信があった。




そんな俺の思惑など、知る由も無いのか。

『彼』は大きくうねりをあげながら、
空の上で、呑気に『歌』を歌い出した。


ああ、またあれを歌っているのか。


『彼』は、人間の歌が割りと好みらしい。


俺が以前、気まぐれに口ずさんでいた歌を
いつの間にか覚え、
時々、こうやって歌うのだ。



背後から
慌ただしくこちらへ駆けつける
親衛隊の気配がする。


地上は
屠った騎士たちの死臭と、黒煙が漂い
地獄さながらの様相だったが


降り注ぐ『彼』の歌声だけは


天の国のものだった。




------------------
【SIDE A】





悪夢のような光景だった。





十王一柱の参戦で、
形勢が一気にひっくり返ってしまった。


『化身クラス』の聖霊すら、まるで歯が立たない。
 桁違いとは、まさにこのことだ。


上空ではまだ仲間が奮闘している。
だが、全滅するのは時間の問題だろう。



十王は、必死で食らいついてくる
『化身』たちに対して
まるで児戯に興じる幼子のように
踊るように、
軽々と蹴散らしていく。


その気になれば、
一瞬でカタをつけることも可能であろう。


しかし、敵の戦意を
最後のひとかけらまで
じっくりとそぎ落とす為に

遊ばせているのだ。あの男は。


「化け物め…!」


『化身』を破壊されてしまった私に、
もはや十王とまともに戦える力は残されていない。

このまま仲間が倒れていく姿を
見届けるしかないのかと
唇を噛みしめた。



その時だった。



辺り一帯を、幕のように覆っていた黒煙が
わずかに晴れた。



その隙間に、あの男の姿を捉えた。



高みの見物と言わんばかりに、
ひとり呑気に、上空にいる自らの十王を眺めている。



千載一遇の好機…!



私は走り出した。



あの男の首を獲るには、今しかない。

奴の十王は今、遥か上空。
この距離なら、奴が十王を手元に戻すより先に
私が奴の首を刎ねる方が速い。


奴を殺せば、十王も消失する。


こちらの戦団はほぼ壊滅状態。
手練れの騎士の殆どを失った。

いまさら足掻いたところで、我々の敗北は確実であろう。

 
ならばせめて


(帝国の切り札である十王を奪ってやる…!)



眼前に、奴の姿が迫る。

刃圏に入るまで、あと5秒もかからない。

あきれたものだ。護衛をひとりも連れていない。

こちらに気付いた奴と、目が合った。



だが、もう遅い。



そう思うのと、私が剣を抜くのは同時だった。



獲った!




そう確信した、瞬間。



私の目の前に、『壁』が現れた。



突如出現したそれに為す術もなく、
私は弾き飛ばされる。



「!???!!…っっ!」



予想だにしなかった痛みと衝撃に耐えながら、
なんとか体勢を立て直した私が見たものは



今まさに放たんとする、禍々しい閃光を湛えた
『十王』の巨大な口と

 


うっすらと笑みを浮かべた
奴の、不気味な竜眼




それが最期だった。




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王と皇帝,バルムンク

慟哭

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幼い頃からそうであった

殿下は決して泣くことが無い


母君を見送った朝も

父君に銃口を向けられた夜も


あの方は決して泣くことは無かった


最初から そんなものは 持ち合わせていないかのように

 

あの方の竜眼が  涙で歪むことは無い


ただ


あの追憶の黄昏で


まばたきひとつせず


嗚咽の声ひとつ無く


辺りが宵闇に包まれて


明けの明星が昇るまで


ただ「其処」に座していた あの御姿を



 私は忘れることが出来ない


畳む

くれない,バルムンク