カテゴリ「ドレイク」に属する投稿[2件]
			
			悪夢と声

- SIDE A -
誰かが ぼくを
狭くて暗い場所へ 押しこめる
ぼくは 出して と叫ぶけれど
誰かは手を 差し伸べてはくれない
ただ ぼくに 何かを言っている
でも ぼくはこわくて
さびしくて
必死に出ようと 腕を伸ばす
最後に 蓋がとじられて
ぼくの世界はまっくらになる
そこでいつも 目が覚めるんだ
- SIDE B -
ああ 神様
ああ なんということだ
 
なんだ なにがいけなかった
あの娘に
あの娘に何の罪があったというのだ
どうして どうしてなんだ
ああだめだ 考えるな
走れ
とにかく 今は走るんだ
ここだ
たしかここにあったはずだ
古い水路
わたしが子供の頃 よく通った
湖に通じる 枯れた水路が
大人はとても入れない
でも この子だけならきっと
 
進めるはずだ
ああ かわいそうに
泣かないでおくれ
すまない どうか許してほしい
お前にひどい嘘を言う
----母上はもう先に行った
おまえも早く行きなさい
----湖へ出たら いいかい?
フクロウの像で待つんだ
そこから決して 動いてはいけないよ
----少し遅れるが 私も必ずあとで行く
だから早く行きなさい
わたしは これから死ぬだろう
中央からの助けは
おそらく 間に合わない
もうお前とはお別れだが
どうか
どうか生き延びておくれ
そして 出来る事なら
今日と言う 悪夢のような日を
永久に 忘れ去りなさい
畳む
		
	
- SIDE A -
誰かが ぼくを
狭くて暗い場所へ 押しこめる
ぼくは 出して と叫ぶけれど
誰かは手を 差し伸べてはくれない
ただ ぼくに 何かを言っている
でも ぼくはこわくて
さびしくて
必死に出ようと 腕を伸ばす
最後に 蓋がとじられて
ぼくの世界はまっくらになる
そこでいつも 目が覚めるんだ
- SIDE B -
ああ 神様
ああ なんということだ
なんだ なにがいけなかった
あの娘に
あの娘に何の罪があったというのだ
どうして どうしてなんだ
ああだめだ 考えるな
走れ
とにかく 今は走るんだ
ここだ
たしかここにあったはずだ
古い水路
わたしが子供の頃 よく通った
湖に通じる 枯れた水路が
大人はとても入れない
でも この子だけならきっと
進めるはずだ
ああ かわいそうに
泣かないでおくれ
すまない どうか許してほしい
お前にひどい嘘を言う
----母上はもう先に行った
おまえも早く行きなさい
----湖へ出たら いいかい?
フクロウの像で待つんだ
そこから決して 動いてはいけないよ
----少し遅れるが 私も必ずあとで行く
だから早く行きなさい
わたしは これから死ぬだろう
中央からの助けは
おそらく 間に合わない
もうお前とはお別れだが
どうか
どうか生き延びておくれ
そして 出来る事なら
今日と言う 悪夢のような日を
永久に 忘れ去りなさい
畳む
『・・・う~ん、ちょっと状況がわからないなぁ。
だれか説明してくれる?』
「ダレス卿。どういうつもりだ?」
「それはこちらの台詞ですな、殿下。
魔法使いをこの国に入れるなど…何を考えておいでです?」
「知れた事。
妹にかかった【呪い】は、もはや聖霊術ではどうにもならん。
手段を選んでいる余裕も時間も無い事は、わかりきっているだろう。」
「そこで魔法使いの力を借りようというワケですか?」
「そうだ。」
「承服できませんな。
治療のフリをして、姫様にどんな【呪い】をかけるか
わかったものではありません。」
「では、このまま何も手を打たず
アリィが死ぬのを待てと抜かすのか 貴様らは?
大した忠義心だな。」
「今、我が国の術師たちが 総力を挙げて治療法を探っております。
ご安心ください。」
「それでは手遅れになると 何度言わせる気だ!」
「仮にそうなったとしても…
〝ナスカディルの王族は魔法使いに命を救ってもらった〝
…などという話が広まり、
この国の沽券に関わるような事態に
陥るよりは…致し方ありません。」
「はっ、それが【国王陛下】のご意見か。
相変わらず体裁ばかり拘るじじいだ。
娘の命すら その天秤にかけるとはな!」
「殿下。そうなった場合に 一番お辛いのは姫様です。
名誉を汚した王族に対して、陛下がいかにお厳しいか…殿下はよくご存じのはず。」
「…ダレス。警告してやろう。
私が剣を抜く前に、下がれ。
今の私には、これ以上
お前の戯言に付き合ってやる余裕は無い。
私がアリィの為なら、【何でもする】ことは
お前もよく〝ご存じ〝だろう?」
「・・・・・・・・。」
『は~、どこの家庭も大変だなぁ。』
「…小僧。
死にたくなければ余計な口を挟むな。」
『ははっ、どうせ殺す気なくせに。
最後の一服ぐらいさせてよ。
ところでこんな話を知ってるかな?
ドラグーンもハーディンも
全体の数からすれば 大して差は無いんだけど
ドラグーンの【カラビニエ】みたいな
戦闘特化部隊っていうのは 本当に少数で
ドラグーンの殆どは、
研究職みたいな非戦闘タイプなんだよね。』
「…あ?」
『クラウンを使える上級者はそこそこ多いけど、
戦闘機動までできるかと言われたら、そういうわけでもなくてさ。
やはり戦闘員の多さは、 ハーディンには全然、及ばないみたいだよ?』
「一体何の…」
『でもね』
『そのハーディンも、実戦経験の殆どが
【魔獣】相手でさ。
戦闘タイプのドラグーンは少ないから
遭遇率も低いんだろうねぇ。
ドラグーンと実戦経験のあるハーディンは
大僧正お抱えの『暁星騎士団』、
あとは先の戦争経験者ぐらい。
その経験者も、今や引退か高齢化しちゃってて
若手の経験不足が ずいぶん深刻らしい。
だから結構 やられちゃうんだってさ。
知らぬ間に ドラグーンの 術中にハマってね。』
「・・・・・・」
『さて、ここで質問なんだけど
僕の見立てでは、諸君らは全員
【経験不足】側の騎士だと思ってるわけだが…
どうかな?
・・・・・・・・
ま…訊くまでもないか。』
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「…お前、一体 何をしたんだ?」
『んー?
みんなで仲良く三日ほど 森の中をお散歩してもらうだけだよ。
前後の記憶はごっそり消えるから大丈夫。
さっきのやりとりも、ここで僕たちと会った事も全部 忘れるさ。』
「いつの間に呪文を?」
『会話や呼吸の合間にね、
【竜言語】のせるぐらいワケないよ。
まぁ この方法だと唱え終えるのに かなり長話しないとダメだけど。
いや~、のんびり聞き入ってくれたから助かったなぁ ホント。』
「…なるほど。
さっきの話が事実だということが、皮肉にも証明されたわけだ。」
『・・・・
(非戦闘タイプも この手の術は出来る事は言ってないけど)
ま、そういうこと。
君も気を付けてね。
お喋りなドラグーンに遭遇した時
相手の話に付き合ったら 駄目だよ。
こんな風に、知らない間に催眠かけるなんて
お手の物なんだからさ。』
「・・・・・・・・。」
『ふふふ、
警戒しなくても 君にはしないよ?
【約束】だからね』
『特に僕なんかはガチンコの肉弾戦が苦手だからね。
色んな手を考えるよ。
ドラグーンや経験あるハーディンなら、
【竜言語】の特殊な発音に気付いて
術の完成前に相手を攻撃したりするんだけど・・・
マスターの言ってた通りだ。
経験不足って 怖いねぇ。』
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