MEMO

創作語りとかラクガキ

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No.98, No.97, No.96, No.95, No.925件]

『暗殺』
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雲一つない快晴の
のどかで
穏やかな日だった

きっとこんな気持ちのいい日に
悪いことなど起こりはしないと

心のどこかで
呑気に
そう思い込んでいたのだろう





-Side A-


木の葉がひらりと
舞い落ちるように、何気なく


目の前にいた上官の首が
静かに、落ちた。


え?
という声をあげる間もなく

その傍にいた同僚も、
首をひと突きされ

呻き声ひとつなく、崩れ落ちた。

どさり、と人が倒れた音に
驚いた殿下が振り向く前に

私はしっかりと、小さな殿下を
胸に抱え込むことに成功した。

大丈夫
殿下は見ていない。

しかし、私ができたのはそこまでだった。

銃を抜く前に斬られる者。
撃つ前に腕を落とされた者。

私以外の、4名の護衛は
一瞬にして屠られた。

場違いなほど、爽やかな風が
さぁっと流れる。

私は、殿下を抱え込んだまま
只々、混乱していた。


なぜ


あなたが。


しかし、これ以上考えている時間はない。

目の前の「刺客」は
一歩
また一歩と、こちらに迫っている。

まるで、庭の手入れをするかのような足取りで
血濡れた刀身を、ひと払いしながら。


逃げなければ。

動かなければ、死ぬ。


まだ3歳になったばかりの
幼い殿下が殺されてしまう。

氷を纏ったかのような
全身の冷や汗とは対照的に

胸元に感じる、小さくあたたかな温もりが
折れそうな私の闘志を、辛うじて奮い立たせた。

無意識のうちに、腕に力が入ったのだろう。

強く抱きしめる私に抗議するかのように
殿下の、窮屈そうな幼い声が
私の胸元から上がった時。

「刺客」は一瞬、
凍り付いたように動きを止めた。


瞬間。
身体はもう動いていた。


視界に土煙が拡がる。

全力で地面を蹴ったことで、土がめくれ上がったようだ。

そう思考が追いついた時にはすでに
私は、全力で駆け出していた。


心臓の音が、ひどくうるさい


私は

これまで祈ったこともない
「神」に祈りながら

背後に迫る殺気を
振り切ることに必死だった

だから

胸元に収まる 小さな存在が

ゆっくりと、「眼」を開き

背後の刺客を見据えたことに





一切、気付くことはなかったのだ




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-Side B-


-とある帝国重臣の日記-
(現在は焼却され、一切の記述は残されていない)


恐ろしい事が起きた
ブラムド皇子が暗殺されかけたのだ

それも皇居の敷地内で、である

ことの始まりは、×日・午前10時頃
ブラムド皇子が散歩にいきたいと、騒ぎ出したそうだ

この日、陛下は急な会合の為
アドゥミラ公国へ出立して3日目を迎えた朝だった

クラウディア皇后陛下は、
姫君を出産してから体調が思わしくないアイリス妃に
連日のように付き添っておられた

ご両親にかまって頂けない寂しさもあったのだろう
その日の殿下はことさら聞き分けがよろしくなく、
強情であったそうだ

親衛隊である1番隊の殆どは、陛下に同行

3番以下の部隊も、
生まれたばかりの姫君の警護に張り付き
九夜を経過するまでは、厳戒態勢を敷いている

この間は他の皇族も、公の場に出ることは控え
皇宮にも渡らず、お住いの宮で過ごすことが
慣例となっている

いつもであれば、母上である皇后陛下が
皇子をなだめてくださるが
陛下はもう、二日も殿下と顔を合わせていなかった

侍女たちもすっかり困り果てていたところ
「皇居内の『西の園』までなら、お供いたしましょう」
と 、オルハが申し出たので

二番隊の隊員5名を引き連れて
散歩へとお出かけになられた

厳戒態勢を敷かれている皇居の敷地内
何も危険なことはないと、判断してのことだったのだろう


その結果


 二番隊の副隊長、オルハを含む
 隊員4名が殉職

1名が重傷を負いながらも
皇子を無傷で生還させた

現在、皇子は皇后陛下と共に
 一級警護のもと、私室で大人しくお過ごしになられている

幸いにも、皇子は
救出された際には気絶していた為
暗殺されかけた時の状況を覚えてはおられないようだ

後々、御心に傷となって残る心配はないだろう

一方、重傷を負ったアズマ隊員は
一時生死の境を彷徨ったそうだが
時間が経つにつれて、驚異的な早さで快方に向かっている

どうやら『スティグマ』は、回復力も怪物級であるらしい

陛下があの『スティグマ』の少年を拾った時は
いい加減にして頂きたいと、眩暈を覚えたものだが

彼がいなければ、皇子は間違いなく殺されていただろう

精鋭のカラビニエ4名を
反撃の隙を与えることもなく葬り

『鬼人(キビト)』と呼ばれるほどの
身体能力を誇る『スティグマ』に重傷を負わせた刺客

その正体を、私は最初から
分かっていたような気がする

アズマ隊員に意識が戻った時

彼は、団長のロディエルにすら
『刺客』の名を話そうとはしなかったそうだ

おそらくロディエルも、
その様子から全てを悟ったに違いない

人払いをした後
アズマ隊員の口から『その名』を聞いた私に
彼はその後一切、何も訊ねなかった

皇子を狙った『刺客』は

『あの者』は

もう二度と、皇宮には現れまい


おそらく今日から数日も経たぬ間に
『死体』がどこかであがるはずだ

どこの誰かも知られないまま

闇に葬られる
『自殺者の死体』が

畳む

王と皇帝,ブラムド

らくがき
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俺自身は全く覚えていないのだが

小さい頃の俺は、
随分と手のかかる
いたずら小僧だったらしい。

特に2~3歳の頃はひとり遊びすることが多く
広大な城の中を、供も付けず一人で
勝手に歩き回るので

目を離すとすぐに姿を消してしまう俺を
母上や侍女たちはひどく心配したそうだ。

しかし、
ケロッとした様子で戻ってくる俺の行動に
周囲もその内慣れていったという。

俺が『ひとり散歩』からご機嫌で戻ってきた後は、
城内のあちこちでいたずらの痕跡が見つかる。

特に多かったのは落書きだったそうだ。

お気に入りの落書き道具はチョーク。
どうやら親父の研究室から拝借したらしい。

壁や床は格好の獲物で、
中には『なんでこんな所に?』というような
明らかに手の届かない場所や、
普段は立ち入ることはないような場所にまで描いていたらしく
城内のミステリーになっていたとか。

しかし、こんな話をいくら聞かされても
俺は幼い頃、絵を描いていた記憶が無い。

お気に入りだった紫色の猫のぬいぐるみ。

よく遊んでいた積み木の感触。

ボールの色。

幼い頃に触れた玩具の記憶は
今でもおぼろげに残っているのに

どんな絵を描いていたのか
なにを描くのが好きだったのか

俺は、何も覚えていない。

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「それは何を描いているんだ?ブラムド」


~side B~



中庭の石畳に座り込み、
きょとんとした顔でこちらを見上げた息子は
『んー?』と言って首を傾げた。

 落書きの現場を発見されたにも関わらず
怒られるとは微塵も思っていない様子だ。

まぁ別に咎める気も無いが。

こいつは今年3歳になったばかりだが、まぁよく動き回る。
 一秒でも停止していない。

そんなチビ猿が大人しくなるのが、
こうやって何かを描いている時だ。

話には聞いていたが
なるほど
随分と奇妙な絵を描く。

妻が心配するわけだ。

こういう時期の子供は
大抵身近な人物や物、
好きな動物や絵本のキャラクターを描くことが多い。

少なくとも、見た事があるものしか描けないはずだ。

生まれて数年足らずのこいつが、
これまで見てきたものなど高が知れている。

にもかかわらず。

こいつは城内では見ることは
有り得ないであろうものを、よく描く。
そう語るミハの表情は、常に不安そうに陰っていた。

しかし、所詮は子供の落書き。
さほど気には留めていなかった。

 が。

「…確かにこれは不安にもなるな。」

落書きを眺めながら、ぼそっと呟いた俺の言葉に
ようやく話す気になったらしい息子は
舌足らずな高い声で、喋り始めた。

「あのね~。
 これはおじいちゃんで~
 あっちはおねえちゃんと~
 おねえちゃんのおにいちゃん。

 でもね、こっちはあかちゃん!
 だからあいにくるんだよ!」


「そうか。」

うむ、予想通り
何言ってるのかひとつも理解できねぇ。

「ぐるぐるしてて~おててつなぐの。
  ぼくね!まんなかのやく!
 ずっとまんなかにいたの!えらいでしょ!」

 
「ほう。」

なんか、普段使ってない部分の
脳みそ使うな。この会話。


「でもね~いまはまんなか、だれもいないの。
  だれかいないとこまるんだよ。
 こまったね?」


俺がいま困っている。

「…誰かがいないとなんで困るんだ?」

言った瞬間、訊かなきゃよかったと心底後悔した。
また支離滅裂なトークが始まるに違いないというのに。

するとこいつは怒った様子で訴えた。

「こまるよ!ちちうえもこまるでしょ!」

知らねぇよ。

あまりに意味不明な話に思わず吹き出すと、
ますます怒り心頭になったらしい息子は、
俺のマントをひっつかみながら
キィキィと喚きだした。

「も~ばかー! ちちうえのばかー!」

「なんでお前に馬鹿呼ばわりされなきゃならんのだ?ん?」

足元で騒ぐ小人を肩に担ぎあげると、
小さな暴君は途端に大人しくなった。

肩車すれば大抵のご機嫌は直るので、ちょろいものである。

俺の頭上ではまだ『こまるのに・・・』
とぶつくさ言っているが
ぷらぷらと嬉し気に揺れている足が
怒りが治まったことを物語っている。


風が冷えてきた。


中庭にも西日が差し込み、
昼と夜の狭間が出来ている。

「もう戻るぞ。
 お前が熱を出すと、またうるさく言われるからな。」

反発の声は降ってこないので、返事を待たずに歩き始めた。
うとうとし始めているのかもしれない。
首の後ろがやけに温い。

この待望の世継ぎに対して、
周囲は過保護っぷりは呆れるほどだ。

元々子供好きなミハはまぁわかるとして、
あのマクスウェルでさえ
こいつに対しては随分と対応が甘い。
相変わらずニコリともしないのだが。

だからまたいつもの過剰な心配だと思っていた。
だから実際に様子を見に行くこともしなかった。

しかし。

「これはすぐに消させた方がよさそうだな…。」

妻の、クラウディアの目に入る前に。

中庭の石畳、全てを埋め尽くすように描かれた

おびただしい数の

息子の『落書き』を。

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通り雨
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渇きを癒して すぐ止んだ
私の愛しい通り雨



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幼い頃、雨の日が大好きだった。

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みなが家に籠もり、
町から人の気が無くなる薄暗い日。

誰もいない小道を
母といっしょに散歩できる唯一の日だった。

あの頃、僕にとって外の世界は
雨の世界が全てだった。

いつもは潜めている声も
雨の音が全て消してくれる。

僕をジロジロ見てくる人々も
雨が家の中へと封じ込めてくれる。

誰も見てくる人がいないから、
いつもは隠している眼で
空を見上げることもできた。

雨が
僕にわずかな自由を与えてくれた。

そのせいだろうか。

いつからか、僕がふと願うと
雨が降るようになった。

庭先の花が枯れそうになった時も。

隣の山で火事が起こった時も。

母と離れ離れになったあの日も。


僕を不安から守るかのように、雨が降った。


兄のもとで暮らすようになって
すっかり背丈も伸びきった頃

雨は、ほとんど降らなくなっていた。


もうお守りはいらないのだと
弱い子供ではなくなったのだと

そう思っていたのに




最近また



雨が、よく降る。

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おまえは雨みたいな男だな


そう言うと
むかしから雨男なんだよ
と返ってきた

そういう意味で言ったつもりではなかったが
うまく説明する言葉が見つからなかったので
そのまま言い流すことにした

確かに、よく雨が降る
私が出かけようと思った時には、特に。

その度に奴は、
遣らずの雨だねぇ
と、うれしそうにぬかすので

こちらもすっかり
毒気を抜かれるのだ


本当に


雨みたいな男だった


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きっと一生、忘れることはない
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漆黒の葬列に
似つかわしくない程の
紺碧の空

雲ひとつない快晴の日

わずかに震えていた父の手と

まるで幻のように降った


あの雨を

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VLAD,ドレイク

深い花畑
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誰が語り始めたのか
どこから伝わったのか
どれほど昔のことなのか

何もわからないまま 
ただ伝わり続ける御伽噺がある

世界のどこか
誰も知らないどこかに
誰もたどり着けない 庭が眠っている

そこは朝も夜もなく
生も死もない

深い花畑と呼ばれる場所

薄紅色の花が
地の果てまで咲き誇り
決して止むことのない小雨が
静かに降り続ける庭

その庭を護る者は  

顔を持たない わらべ達と

声を持たない 赤毛の男

わらべたちはただ 歌い続け
男はただ 花を摘み続ける

時が止まったかのような
静かな 静かな庭


もし  その庭の「雨」が止んだら


人々は 思い出さなければならない





もし、雨が止んだら




畳む

VLAD