MEMO

創作語りとかラクガキ

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No.70

対岸のふたり
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そして、二人以外に
動くものの気配は無くなった。

銃声の余韻も消え去り
沈黙が落ちる瞬間、

二人は同時に振り返った。




「・・・・・・」

「・・・・・・」


互いに得物を向け合ったまま、数秒睨み合ったのち
最初に口を開いたのは、ヴラドの方だった。


「おたくも頑張るねぇ。
 そんな簡易法具で魔境の深部までおつかいとは。
 妖素中毒になる前に引き返した方がいいぞ?」

「生身姿の貴様に言われたくはない。
 そもそも何故ここいる?
 行く先々で現れて、鬱陶しい事この上ない。」

「ご挨拶だな、助太刀してやったのに。」

「頼んでいない。必要もなかった。」

「ま、たしかに。」

強がりではない。
それは周りに転がっている死体の数を見れば明らかだった。

ヴラドが参戦した時には、既にこの半数を
彼女は一人で倒し終えていたのだ。

「相変わらず勇ましい事で」

賞賛とも皮肉とも取れるようなヴラドの言葉を聞き流しつつ、
カミーユは剣を収めた。
時間の無駄と感じたらしい。

「とにかく、もう邪魔立てするな。
 私は忙しい。」

わざとらしいくらいの溜息を吐きつつ、
カミーユは歩き出した。

そのあとを、当然ようにヴラドが続く。

その気配に気付いたカミーユの表情がピキッ、と強張り、
睨みつけるように振り返った。

「付 き ま と う な
 …斬るぞ。」

最後の一言はかなりの怒気と殺気を込めて言い放ったが、
ヴラドの表情は飄々としたものだった。

「…以前にも言ったがな。十王探しはやめておけ。」

またか。
カミーユは舌打ちしたくなった。
聞き飽きたセリフである。

毎度、十王の手がかりを追って来てはヴラドたちが現れ、
この忠告をカミーユに投げかけてくるのだ。


十王を所有したいのは、ドラグーンの魔法使いたちも同じだ。
ゆえに現場で遭遇すれば、牽制・妨害は当然のこと、
命の奪い合いになることも少なくはない。

なのに、この魔法使いは
相手の命を奪うどころか助太刀に入り、
露骨に妨害してくるわけでもなく
毎回同じ忠告だけをしてくる。

(わけがわからん…)

カミーユは思った。


聞き流し、無視すればよいことなのだが
この魔法使いが【忠告】を言い放つとき、
必ずある種の感情が込められている事を
カミーユは敏感に感じ取っていた。

憐憫。

カミーユにはそれが癪だった。

こちらとしては国と、その民が生きる大地を守る為
命をかけて十王を探しているというのに。

こちらの意欲を削いでくる上
全てをわかったような、
憐みの目で忠告を寄越すこの魔法使いが、

カミーユは大嫌いだ。







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