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創作語りとかラクガキ

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No.28

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これは遠い遠い むかしの話

今では一部の語り部しか
知らない『竜』の伝説

『魔境』が生まれるより遥か前

『旧世界』と呼ばれていた

むかしむかしの 世界の話


竜と人間 Ⅰ

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世界はかつて
竜によって管理されていた

ひとつの生き物が増えすぎないように監視し

世界のバランスを保つことが
竜の役目だった


人々は、この偉大な英知の象徴でもある
竜を崇めていた


竜もまた
地上でも特に個性的な考えを持つ
「人間」という生き物に興味を持ち


竜の力の一部を人間に与えた

その竜の力は後に
『魔法』と呼ばれるようになった




人間は『魔法』を生活に役立てた

『魔法』は人々を幸せにした

竜はただ その様子を見ていた




ある時
人々の間で争いが起きた




きっかけが何だったのかはわからない


ただ争いはどんどん大きくなり


人々は
戦いの武器として


人を傷つける道具として


『魔法』を使った




『魔法』は多くの命を奪い

『魔法』は多くの国を焼いた

『魔法』は多くの森を焼き

『魔法』は大きな海をも汚し

『魔法』は多くの生き物の住処を奪った






竜は ただ見ていた






長い長い争いが
ようやく収まると

人々は
より良い暮らしを求めて

『魔法』を使い
国を大きく発展させた




大きな工場が建ち並び

そこから出る黒い煙が
空を覆った

そこから出る灰色の水が
川を汚した

『魔法』は

”人間”の生活を 幸せにした


そして 
強い『魔法』を使える者ほど

弱い者を虐げ

奪い

踏み付けにした


やがて『魔法』は
”強い者”の象徴になった






竜は 






ただ見ていた








”幸せな人々”は


姿を見せなくなった
竜のことを


すっかり
忘れ去っていた


もうとっくに
死んでしまって


生きていないとすら
思っていた







”虐げられた人々”は


”幸せな人々”が支配する国を捨て


竜のもとへ


戻ることにした





そして






竜は現れた






竜は”人々”に向かって
こう言った





お前たちに与えた『魔法』を 返してもらおう 






この言葉を聞いて
”幸せな人々”は言った




 ふざけるな 古くさい神め
  こんな理不尽が許されるか








この言葉を聞いて
”虐げられた人々”は言った

 
 どうぞ御心のままに 我が神
  貴方に全てを委ねます
 







そして”人々”は 

『魔法』を喪った




国は機能しなくなり

『魔法』で支えられた文明は

脆く 

あっけなく

立ちどころに

崩れ去った



さらに竜は



混乱する”人々”に対して

まるで
追い打ちをかけるかのように

文明の抜け殻となった
”人々”の都市を

徹底的に破壊した







畑を耕すかのように

虫を駆除するかのように

ただ淡々と

無情に

人の文明を

全て








無に帰していった




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VLAD