#設定竜と人間 Ⅱ------------------------続きを読む竜の裁可によって『魔法』を失った人々は竜を怖れ その殆どが竜の力が及ばぬ地下世界へと逃げ込んだしかし地上には竜を慕い残った者もいたかつて虐げられた人々だった『魔法』を使えない地上での生活は過酷なものだったしかし 彼らはもう高度な文明を求めなかった彼らは人間に『罰』を与えた竜を崇め続けた神から賜った力を欲の為にしか使えなかった人間への当然の『罰』だと彼らは受けいれた時折人々の前に現れた竜を前にすると彼らは赦しを乞うように祈り続けたそんな彼らを前に竜はもう『罰』を与えようとは思わなかったが彼らに二度と『魔法』を与えることもしなかったその代わりに竜は彼らに『歌』を与えた『歌』であれば誰も血を流すことは無い『歌』であれば誰も死ぬことは無いこの過酷な暮らしの慰めに人々は『歌』をうたったそんな暮らしがずいぶんとずっとずっと長く続いた頃ある時月から 星が堕ちてきた光を纏い炎を纏い神々しくも恐ろしい『それ』を人々は『炎の巨人』と呼んだ天空は巨人の炎で夜を焼かれ大地は巨人の炎に覆われていき海原は巨人の炎で干上がっていく竜は人々に言った あの『巨人』は 全てを滅ぼす使いである 我々『竜』も 『人』も 地上の生き物全てが等しく息絶える 死の使いである いずれ来るはずだった 『約束の時』が とうとう きてしまったそれを聞いた人々は祈ろうとした『死』を受け入れる為の祈りだったしかしそれを竜は止めた竜は言った 『約束の時』は 『竜王』と『巨人』との約束である 『約束』はいずれ 果たされるべきである しかしそれは 今ではない 『わたし』はこれから『竜王』に背き 『約束の日』を 先延ばす 『わたし』はもう お前たちの前に現れることは無い 『竜』はもう 世界を監視することは無い お別れだ 『祈りのにんげん』たち 『わたし』が教えた『歌』を謡って ときどき 『わたし』を 思い出しておくれ竜は飛び去ったとおく とおく『巨人』が燃え立つ 海の上へと同胞の竜が次々と焼け墜ちていく 空の下へと飛び去ったやがて赤く染まっていた天空に闇夜に戻り唸りをあげていた熱風が声を潜めまさに火が消えたような静寂が戻ったが竜は戻らなかった永遠に畳む 2025.1.11(Sat) 22:52:56 VLAD
竜と人間 Ⅱ
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竜の裁可によって
『魔法』を失った人々は
竜を怖れ その殆どが
竜の力が及ばぬ
地下世界へと逃げ込んだ
しかし地上には
竜を慕い
残った者もいた
かつて
虐げられた人々だった
『魔法』を使えない
地上での生活は過酷なものだった
しかし 彼らはもう
高度な文明を求めなかった
彼らは
人間に
『罰』を与えた竜を
崇め続けた
神から賜った力を
欲の為にしか使えなかった人間への
当然の『罰』だと
彼らは受けいれた
時折
人々の前に現れた竜を前にすると
彼らは
赦しを乞うように祈り続けた
そんな彼らを前に
竜はもう
『罰』を与えようとは思わなかったが
彼らに二度と
『魔法』を与えることもしなかった
その代わりに
竜は
彼らに
『歌』を与えた
『歌』であれば
誰も血を流すことは無い
『歌』であれば
誰も死ぬことは無い
この過酷な暮らしの慰めに
人々は『歌』をうたった
そんな暮らしがずいぶんと
ずっとずっと
長く続いた頃
ある時
月から 星が堕ちてきた
光を纏い
炎を纏い
神々しくも
恐ろしい
『それ』を
人々は『炎の巨人』と呼んだ
天空は
巨人の炎で夜を焼かれ
大地は
巨人の炎に覆われていき
海原は
巨人の炎で干上がっていく
竜は
人々に言った
あの『巨人』は
全てを滅ぼす使いである
我々『竜』も 『人』も
地上の生き物全てが等しく息絶える
死の使いである
いずれ来るはずだった 『約束の時』が
とうとう きてしまった
それを聞いた人々は
祈ろうとした
『死』を受け入れる為の祈りだった
しかしそれを
竜は止めた
竜は言った
『約束の時』は
『竜王』と『巨人』との約束である
『約束』はいずれ 果たされるべきである
しかしそれは 今ではない
『わたし』はこれから『竜王』に背き
『約束の日』を 先延ばす
『わたし』はもう
お前たちの前に現れることは無い
『竜』はもう
世界を監視することは無い
お別れだ
『祈りのにんげん』たち
『わたし』が教えた『歌』を謡って
ときどき 『わたし』を 思い出しておくれ
竜は飛び去った
とおく とおく
『巨人』が燃え立つ 海の上へと
同胞の竜が
次々と焼け墜ちていく 空の下へと
飛び去った
やがて
赤く染まっていた天空に
闇夜に戻り
唸りをあげていた熱風が
声を潜め
まさに火が消えたような
静寂が戻ったが
竜は戻らなかった
永遠に
畳む