#記録と記憶記録と記憶①記録:xx年x月xx日 観察対象:No.8341・日光、水の供給を停止してから7日目。 養分として与えたラット3匹は わずかな体毛と骨を残して分解されている。 やはり生物から栄養を摂取すれば 水が無くとも生存できるようだ。 ・そして生物からの摂取の方が 生長と再生が格段に速い。 面白い事にこの個体は 人型を模すように再生する。 ・以前からこの種は、捕食した生物の形状に 変化することは確認されていた。 しかしその殆どが四足動物で 人型に化ける個体は確認されていない。 ・この個体が過去に人間を捕食し その形状を記憶したと推察できる。 しかし生息地の環境から 人間だけを過剰に摂取したとは考えにくい。 ・なぜ数多くの捕食した生物の中から 人間の形状を取ろうとするのか。 次の実験では、人間の血液を与えてみ「ちちうえーーーーー! これなーにー?」 「若様いけません!お待ちください!」続きを読む・・・・・・・はあーーーーーーーー…。「あ、待て止まれ! それに触るなブラムド! おい、マクスウェル… おちび連れて来んなよ。」「申し訳ございません、陛下。 偶然通りかかったところに ここへ入り込もうとする若様をお見かけしたものですから。 お止めしたのですが…」「それはご苦労だったな。 ミハはどこだ? こいつのお守りはあいつの役…って、 さ、わ、ん、な、 つってんだろうがお前は。」「え~、なんでダメなの?」「お前の破壊神っぷりは有名だからな。 先週は書庫の書物に足跡つけまくったとか?」「あ!わかったこれガイコツだ!」「聞け。」「それにしても… 相変わらず趣味が良いとは 言い難いものばかり研究されていますね。 【タタリガダリ】に 【シゲンバナ】… どなたか呪い殺すおつもりで?」「お前とかな」「おや【モドキガミ】ですか、これは。 実に珍しい」 「あんな頭が堅い人間になるなよブラムド。 わかったか?」「わかんない!」「変わった形態をしていますね… 一体何の実験です?」「まぁ色々と、だ。 まだまだ観察段階だな」「しかしこの種は 国が認めた研究機関以外での保有は禁じられている 第一級禁種ではありませんでしたか?」「よく知ってるな。感心感心。」「……そう定められたのも 陛下であったと記憶しておりますが。」「ああ。 だから何の問題ない。」「・・・・・・・陛下」 「そう睨むな、お堅い”堅牢”よ。 いつだって俺が法律だろ。 なぁブラムド?」「ちちうえがホウリツ?」「若様に悪質な帝王学を刷り込まないでください。」「おおらかに育てる方針なんだよ、うちは。」「左様でございますか。 それ故に若様の多少のいたずらも おおらかにお許しになるのですね。 流石、御心が広くていらっしゃる。」「あ? ・・・・・・・おいブラムドお前それ いつの間にどこから持ってきた!?」「ひろった。」「嘘つけ! あ、コラ押すな!返せ! ~~~~なんでガキってのは ボタンだのスイッチだのやたら押したがるんだ」「あー!かえして~!」「やかましい。この槽を開けるな。 せっかく整えた実験環境を台無しにする気か、 お前。」「・・・・・・・・・・・・」「何笑ってんだ、貴様」「いえ、なにも。」「も~かえして! かえしてよ、ちちうえー」「くどい。 一体何がしたいんだ お前は」「だってでたがってるんだもん」「・・・・・はぁ?」「ほら、ずっとこっちみてるよ?」------------------------------------どれくらいこうしていただろう”故郷”に いたころは時の ながれなどかんじたことも なかった けれどここにいると ずいぶん ながい事こうして いるような 気が してくるいつ日が のぼりいつ日が しずんだのかまっくらな ここにいるとなにも わからないここは せまいくうきが おもいみずも ひかりも なにも ないなにも ない この中にあるひ やってきた ちいさな ネズミはすぐうごかなく なって しまったすっかり 冷たくなって しまうまでながめた あと少しずつ たべたたべながら ながれて きたのは『コワイ』『クルシイ』ちいさな ネズミたちの 記憶いきものの 記憶コワイとは なんだろう忘れないようにゆっくり たべた------------------------------音しか きこえない せかいにちいさな あしおとが やって きたあしおとが 目の まえで とまる いつも きこえるニンゲンの 成人個体のものとは ちがうたかい 声ニンゲンの 幼体 目が あった目のまえに あるのはくらやみ だったがなぜか 目が あったような 気がした記憶に ある ニンゲンの 幼体はこんなに つよい気配を もって いた だろうかいや そもそも この 幼体は・・・・・・・・・・・・・わからない----------------------------------------「・・・・・」「・・・・・」「?」「そりゃ気のせいだ、ブラムド。 こいつは生き物じゃない。 庭に咲いてる草花と同じで ただの木の枝だ。 人みたいな形してるから 見られているように感じただけだ。」「そうなの? ん~~~でも・・・」「…そろそろシルヴィアが 昼寝から起きる頃じゃないか? またお前がいないと 兄様兄様って泣きまくるだろうな。 戻らなくていいのか?」「あ、そうだった! じゃあね、ちちうえ! タバコひかえめにするんだよ!」「どこで覚えたそんな台詞… …クラウディアか」「・・・・・・」「・・・・・・・・・・」「・・・コレに、意思があると思うか?」「なんとも申し上げれません… ですが若様は、以前から こういったものに関して 我々よりも敏感に感知されますので。」「魔境の物とはいえ、植物だぞ?」「もしかすると、新種の【人外】かもしれません。 いずれにしても、得体が知れない事は確かです。 研究もほどほどされて 早めにご処分なさってください。」「…ふむ」(その前に少し試してみるか…)「絶対に駄目です。」「何も言ってねぇが?」「よからぬことをお考えの顔でした。 よろしいですか、陛下? 間違っても、絶対に、 【名付け】など、されませんように。」「・・・・・・チッ。」(読まれたか…)「魂が宿ってしまいます。 ましてや【人外】の可能性がある個体になど 何が起こるかわかりません。 厄介事は貴方だけで十分なのですから。」「さらっと暴言吐きやがったなお前。」「まだまだ申したいことはございますが 我慢致しましょう。 陛下、お約束してください。 でなければ今、ここで、それを燃やします。」「わかったわかった。 観察が終わり次第、こいつは焼却処分する。 書類にサインでもすればいいか?」「【名約】でお願い致します。」「…いい加減にしろよ貴様。」「お願い、致します。」「・・・・・・・・」「・・・・・・・・・」「・・・・・・はぁー、【我、バルムンク・シイ=オルテギアの 名にかけて誓う】 …満足かボケ!本当に信用ねぇな!」「結構です」「このクソモノクルが、 不敬罪でいつか殺す…。」「ええ、ええ。 その日が来ることを楽しみしております。」畳む 2025.1.12(Sun) 00:05:23 ブラムド
記録と記憶①
記録:xx年x月xx日
観察対象:No.8341
・日光、水の供給を停止してから7日目。
養分として与えたラット3匹は
わずかな体毛と骨を残して分解されている。
やはり生物から栄養を摂取すれば
水が無くとも生存できるようだ。
・そして生物からの摂取の方が
生長と再生が格段に速い。
面白い事にこの個体は
人型を模すように再生する。
・以前からこの種は、捕食した生物の形状に
変化することは確認されていた。
しかしその殆どが四足動物で
人型に化ける個体は確認されていない。
・この個体が過去に人間を捕食し
その形状を記憶したと推察できる。
しかし生息地の環境から
人間だけを過剰に摂取したとは考えにくい。
・なぜ数多くの捕食した生物の中から
人間の形状を取ろうとするのか。
次の実験では、人間の血液を与えてみ
「ちちうえーーーーー!
これなーにー?」
「若様いけません!お待ちください!」
・・・・・・・はあーーーーーーーー…。
「あ、待て止まれ!
それに触るなブラムド!
おい、マクスウェル…
おちび連れて来んなよ。」
「申し訳ございません、陛下。
偶然通りかかったところに
ここへ入り込もうとする若様をお見かけしたものですから。
お止めしたのですが…」
「それはご苦労だったな。
ミハはどこだ?
こいつのお守りはあいつの役…って、
さ、わ、ん、な、
つってんだろうがお前は。」
「え~、なんでダメなの?」
「お前の破壊神っぷりは有名だからな。
先週は書庫の書物に足跡つけまくったとか?」
「あ!わかったこれガイコツだ!」
「聞け。」
「それにしても…
相変わらず趣味が良いとは
言い難いものばかり研究されていますね。
【タタリガダリ】に
【シゲンバナ】…
どなたか呪い殺すおつもりで?」
「お前とかな」
「おや【モドキガミ】ですか、これは。
実に珍しい」
「あんな頭が堅い人間になるなよブラムド。
わかったか?」
「わかんない!」
「変わった形態をしていますね…
一体何の実験です?」
「まぁ色々と、だ。
まだまだ観察段階だな」
「しかしこの種は
国が認めた研究機関以外での保有は禁じられている
第一級禁種ではありませんでしたか?」
「よく知ってるな。感心感心。」
「……そう定められたのも
陛下であったと記憶しておりますが。」
「ああ。
だから何の問題ない。」
「・・・・・・・陛下」
「そう睨むな、お堅い”堅牢”よ。
いつだって俺が法律だろ。
なぁブラムド?」
「ちちうえがホウリツ?」
「若様に悪質な帝王学を刷り込まないでください。」
「おおらかに育てる方針なんだよ、うちは。」
「左様でございますか。
それ故に若様の多少のいたずらも
おおらかにお許しになるのですね。
流石、御心が広くていらっしゃる。」
「あ?
・・・・・・・おいブラムドお前それ
いつの間にどこから持ってきた!?」
「ひろった。」
「嘘つけ!
あ、コラ押すな!返せ!
~~~~なんでガキってのは
ボタンだのスイッチだのやたら押したがるんだ」
「あー!かえして~!」
「やかましい。この槽を開けるな。
せっかく整えた実験環境を台無しにする気か、
お前。」
「・・・・・・・・・・・・」
「何笑ってんだ、貴様」
「いえ、なにも。」
「も~かえして!
かえしてよ、ちちうえー」
「くどい。
一体何がしたいんだ
お前は」
「だってでたがってるんだもん」
「・・・・・はぁ?」
「ほら、ずっとこっちみてるよ?」
------------------------------------
どれくらい
こうしていただろう
”故郷”に いたころは
時の ながれなど
かんじたことも なかった けれど
ここにいると ずいぶん ながい事
こうして いるような 気が してくる
いつ日が のぼり
いつ日が しずんだのか
まっくらな ここにいると
なにも わからない
ここは せまい
くうきが おもい
みずも ひかりも
なにも ない
なにも ない この中に
あるひ やってきた ちいさな ネズミは
すぐうごかなく なって しまった
すっかり 冷たくなって しまうまで
ながめた あと
少しずつ たべた
たべながら ながれて きたのは
『コワイ』
『クルシイ』
ちいさな ネズミたちの 記憶
いきものの 記憶
コワイとは なんだろう
忘れないように
ゆっくり たべた
------------------------------
音しか きこえない せかいに
ちいさな あしおとが やって きた
あしおとが 目の まえで とまる
いつも きこえる
ニンゲンの 成人個体の
ものとは ちがう
たかい 声
ニンゲンの 幼体
目が あった
目のまえに あるのは
くらやみ だったが
なぜか
目が あったような 気がした
記憶に ある ニンゲンの 幼体は
こんなに つよい
気配を もって いた だろうか
いや そもそも
この 幼体は
・・・・・・・・・・・・・
わからない
----------------------------------------
「・・・・・」
「・・・・・」
「?」
「そりゃ気のせいだ、ブラムド。
こいつは生き物じゃない。
庭に咲いてる草花と同じで
ただの木の枝だ。
人みたいな形してるから
見られているように感じただけだ。」
「そうなの?
ん~~~でも・・・」
「…そろそろシルヴィアが
昼寝から起きる頃じゃないか?
またお前がいないと
兄様兄様って泣きまくるだろうな。
戻らなくていいのか?」
「あ、そうだった!
じゃあね、ちちうえ!
タバコひかえめにするんだよ!」
「どこで覚えたそんな台詞…
…クラウディアか」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・コレに、意思があると思うか?」
「なんとも申し上げれません…
ですが若様は、以前から
こういったものに関して
我々よりも敏感に感知されますので。」
「魔境の物とはいえ、植物だぞ?」
「もしかすると、新種の【人外】かもしれません。
いずれにしても、得体が知れない事は確かです。
研究もほどほどされて
早めにご処分なさってください。」
「…ふむ」
(その前に少し試してみるか…)
「絶対に駄目です。」
「何も言ってねぇが?」
「よからぬことをお考えの顔でした。
よろしいですか、陛下?
間違っても、絶対に、
【名付け】など、されませんように。」
「・・・・・・チッ。」
(読まれたか…)
「魂が宿ってしまいます。
ましてや【人外】の可能性がある個体になど
何が起こるかわかりません。
厄介事は貴方だけで十分なのですから。」
「さらっと暴言吐きやがったなお前。」
「まだまだ申したいことはございますが
我慢致しましょう。
陛下、お約束してください。
でなければ今、ここで、それを燃やします。」
「わかったわかった。
観察が終わり次第、こいつは焼却処分する。
書類にサインでもすればいいか?」
「【名約】でお願い致します。」
「…いい加減にしろよ貴様。」
「お願い、致します。」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・はぁー、
【我、バルムンク・シイ=オルテギアの
名にかけて誓う】
…満足かボケ!本当に信用ねぇな!」
「結構です」
「このクソモノクルが、
不敬罪でいつか殺す…。」
「ええ、ええ。
その日が来ることを楽しみしております。」
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